1.沖縄の島々
まず最初に、沖縄県の地理をお話します。沖縄県の面積は2,274.32km2です(平成16年:国土地理院)。これは、日本の面積の約0.6%にあたります。沖縄県は九州から台湾にかけて弧状に連なる琉球列島の一部であり、160あまりの島(0.01km2以上の島)からなる、島嶼県(とうしょ)です。最北端は、硫黄鳥島であり、沖縄県唯一の火山がある島です。現在無人島となっています。ここから最南端の波照間島(有人島)まで、約400kmあります。
 沖縄県を構成する島々は、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島、大東諸島の4つに大きく分けることができます。宮古・八重山諸島を併せて先島諸島と呼ぶ場合もあります。また琉球列島のうち、宮古・八重山地方を南部琉球、沖縄・奄美諸島を中部琉球と呼ぶこともあります(屋久島・種子島あたりを北部琉球)。
面積が最も大きい島が、沖縄島です。俗に”本島(ほんとう)”と呼ばれています。沖縄島は日本で最も大きな島です。ちなみに二番目に大きな島は佐渡島、三番目は奄美大島です。近年脚光を浴びつつある”山原(やんばる)”は、この島の北部地域のことです。県土の約5割にもなる沖縄島に、沖縄県の人口の約9割が集中しています。
諸島 |
属する島 |
| 沖縄諸島 |
沖縄島(沖縄本島)、伊平屋島、伊是名島、伊江島、久米島、座間味島、渡嘉敷島など |
| 宮古諸島 |
宮古島、池間島、伊良部島、下地島、水納島、多良間島など |
| 八重山諸島 |
西表島、石垣島、波照間島、与那国島、竹富島、小浜島、黒島など |
| 大東諸島 |
南大東島、北大東島 |

2.日本と沖縄のカエル達
ここからカエル達の話に入ります。まず日本に分布するカエルの一覧をごらん下さい。日本国内には、43種(正確には38種5亜種)のカエルが分布しています。◎印のカエルが、沖縄県内に分布する種です。●印のカエルは、トカラ列島以南(渡瀬線以南)に分布するカエルです。
日本に分布するカエル達の約5割にあたる、20種(亜種含む)のカエルが沖縄県内に分布しています。20種のうち本土と共通して分布するのは、ヌマガエルと、人が持ち込んだ外来種であるウシガエルだけです。沖縄は湿潤で暖かく、まさにカエル達の楽園なのです。
No. |
科 |
和名 |
学名 |
沖縄県内
に分布 |
沖縄県を含む
琉球列島に分布
(トカラ列島以南) |
No.1 |
ヒキガエル科 |
アズマヒキガエル |
Bufo japonicus formosus |
− |
− |
No.2 |
ニホンヒキガエル |
Bufo japonicus japonicus |
− |
− |
No.3 |
ナガレヒキガエル |
Bufo torrenticola |
− |
− |
No.4 |
ミヤコヒキガエル |
Bufo gargarizans miyakonis |
◎ |
● |
No.5 |
オオヒキガエル |
Bufo marinus |
◎ |
● |
No.6 |
アマガエル科 |
ニホンアマガエル |
Hyla japonica |
− |
− |
No.7 |
ハロウェルアマガエル |
Hyla hallowellii |
◎ |
● |
No.8 |
アカガエル科 |
ニホンアカガエル |
Rana japonica |
− |
− |
No.9 |
ツシマアカガエル |
Rana tsushimensis |
− |
− |
No.10 |
リュウキュウアカガエル |
Rana okinawana |
◎ |
● |
No.11 |
タゴガエル |
Rana tagoi tagoi |
− |
− |
No.12 |
オキタゴガエル |
Rana tagoi okiensis |
− |
− |
No.13 |
ヤクシマタゴガエル |
Rana tagoi yakushimensis |
− |
− |
No.14 |
ナガレタゴガエル |
Rana sakuraii |
− |
− |
No.15 |
エゾアカガエル |
Rana prica |
− |
− |
No.16 |
ヤマアカガエル |
Rana ornativentris |
− |
− |
No.17 |
チョウセンヤマアカガエル |
Rana dybowskii |
− |
− |
No.18 |
トノサマガエル |
Rana nigromaculata |
− |
− |
No.19 |
トウキョウダルマガエル |
Rana porosa porosa |
− |
− |
No.20 |
ダルマガエル |
Rana porosa brevipoda |
− |
− |
No.21 |
ツチガエル |
Rana rugosa |
− |
− |
No.22 |
ウシガエル |
Rana catesbeiana |
◎ |
● |
No.23 |
ヌマガエル |
Rana limnocharis limnocharis |
◎ |
● |
No.24 |
サキシマヌマガエル |
Rana sp. |
◎ |
● |
No.25 |
ナミエガエル |
Rana namiyei |
◎ |
● |
No.26 |
イシカワガエル |
Rana ishikawae |
◎ |
● |
No.27 |
ハナサキガエル |
Rana narina |
◎ |
● |
No.28 |
アマミハナサキガエル |
Rana amamiensis |
− |
● |
No.29 |
オオハナサキガエル |
Rana supranarina |
◎ |
● |
No.30 |
コガタハナサキガエル |
Rana utsunomiyaorum |
◎ |
● |
No.31 |
ヤエヤマハラブチガエル |
Rana psaltes |
◎ |
● |
No.32 |
オットンガエル |
Rana subaspera |
− |
● |
No.33 |
ホルストガエル |
Rana holsti |
◎ |
● |
No.34 |
アオガエル科 |
モリアオガエル |
Rhacophorus arboreus |
− |
− |
No.35 |
シュレーゲルアオガエル |
Rhacophorus schlegelii |
− |
− |
No.36 |
アマミアオガエル |
Rhacophorus viridis amamiensis |
− |
● |
No.37 |
オキナワアオガエル |
Rhacophorus viridis viridis |
◎ |
● |
No.38 |
ヤエヤマアオガエル |
Rhacophorus owstoni |
◎ |
● |
No.39 |
シロアゴガエル |
Polypedates leucomystax leucomystax |
◎ |
● |
No.40 |
アイフィンガーガエル |
Chirixalus eiffingeri |
◎ |
● |
No.41 |
カジカガエル |
Buergeria buergeri |
− |
− |
No.42 |
リュウキュウカジカガエル
(ニホンカジカガエル) |
Buergeria japonica |
◎ |
● |
No.43 |
ヒメアマガエル科 |
ヒメアマガエル |
Microhyla ornata |
◎ |
● |
43種(38種5亜種) |
20種 |
23種 |
◎:沖縄県内に分布 −:分布しない ●:沖縄を含む、琉球列島に分布する |

3.沖縄に分布するカエル達
沖縄県内に分布するカエルの分布概要です。沖縄県内には20種のカエルが分布していますが、オオヒキガエル、ウシガエル、シロアゴガエルは、人により持ち込まれた移入種です。これを除いた17種が在来種となります。
●印の付き方に注目してみてください。沖縄諸島に●が付いたカエルは、八重山諸島には印が付いていません。また八重山諸島に●が付いたカエルは、沖縄諸島に印が付いていません。八重山諸島と沖縄諸島では、分布している種に大きな違いがあります。
科名 |
和名 |
沖縄
諸島 |
宮古
諸島 |
八重山
諸島 |
大東
諸島 |
その他の分布地域 |
| ヒキガエル科 |
ミヤコヒキガエル |
− |
● |
− |
▲ |
− |
| オオヒキガエル *外来種 |
− |
− |
▲ |
▲ |
小笠原(移入)、中米、南米北部など |
| アマガエル科 |
ハロウェルアマガエル |
● |
− |
− |
− |
奄美諸島 |
| アカガエル科 |
リュウキュウアカガエル |
● |
− |
− |
− |
奄美諸島 |
| ウシガエル *外来種 |
▲ |
− |
▲ |
− |
日本各地、北米東部、世界各地(移入) |
| ヌマガエル |
● |
− |
− |
− |
本州中部以西、台湾、東南アジアなど |
| サキシマヌマガエル |
− |
▲ |
● |
▲ |
− |
| ナミエガエル |
● |
− |
− |
− |
− |
| イシカワガエル |
● |
− |
− |
− |
奄美諸島 |
| ハナサキガエル |
● |
− |
− |
− |
− |
| オオハナサキガエル |
− |
− |
● |
− |
− |
| コガタハナサキガエル |
− |
− |
● |
− |
− |
| ヤエヤマハラブチガエル |
− |
− |
● |
− |
台湾 |
| ホルストガエル |
● |
− |
− |
− |
− |
| アカガエル科 |
オキナワアオガエル |
● |
− |
− |
− |
− |
| ヤエヤマアオガエル |
− |
− |
● |
− |
− |
| シロアゴガエル *外来種 |
▲ |
▲ |
− |
− |
ネパール、東南アジア、海南島 |
| アイフィンガーガエル |
− |
− |
● |
− |
台湾 |
リュウキュウカジカガエル
(ニホンカジカガエル) |
● |
− |
● |
− |
トカラ列島以南の琉球列島、台湾 |
| ヒメアマガエル科 |
ヒメアマガエル |
● |
● |
● |
− |
奄美諸島、台湾、東南アジア |
5科 |
20種 |
12種 |
4種 |
10種 |
3種 |
|
●:在来種 ▲:外来種(人による持ち込み) −:分布せず |
●沖縄諸島
12種のカエルが分布しています(一部地域にのみ移入されていたミヤコヒキガエルは除く)。ナミエガエル、ハナサキガエル、ホルストガエル、オキナワアオガエルは、沖縄諸島の固有種(又は固有亜種)です。また鹿児島県の奄美諸島と沖縄諸島にまたがって分布するものがいます。イシカワガエル、リュキュアカガエル、ハロウェルアマガエルの3種です。両島の関連を示すものだと思います。山地森林の渓流に生息するカエルが多く見られるが特徴的です。イシカワガエル、ナミエガエル、ハナサキガエル、ホルストガエル、ハナサキガエル、リュウキュウアカガエルの6種がこれにあたります。これらのカエルは、自然性の高い森林にしか生息できません。そのため、沖縄本島における6種のカエルの分布は、島の北部地域(山原:やんばる)にのみ限られています。
●宮古諸島
4種のカエルが分布しています。島の面積が小さく、大きな河川がありません。そのためか、渓流性のカエルが分布せず、種類数は貧弱です。しかし、琉球列島で唯一自然分布するヒキガエル類である、ミヤコヒキガエルが生息する特異な地域です。ミヤコヒキガエルは、宮古諸島の固有亜種です。中国に分布するチュウカヒキガエルの亜種とされています。ヒキガエルの仲間は他の琉球列島の島には分布していません。ミヤコヒキガエルは、外来種であるとも言われていました。しかし最近、ヒキガエルの化石が宮古から発見され、在来種と考えられるようになりました。
●八重山諸島
10種のカエルが分布しています。八重山諸島は、台湾との共通種が分布しています。ヤエヤマハラブチガエル、アイフィンガアーガエルの2種です。またヤエヤマアオガエルは、台湾のモルトレヒトアオガエルと近縁であると考えられています。
コガタハナサキガエルとオオハナサキガエルは、沖縄諸島に分布するハナサキガエル(Rana narina)と同一種とされていました。最近それぞれ独立種となり、八重山産のものは2種に分けられました。
●大東諸島
3種のカエルが分布しています。しかし3種とも人が持ち込んだカエルです。ミヤコヒキガエル、オオヒキガエル、サキシマヌマガエルが移入されています。
4.人が持ち込んだカエル達
オオヒキガエル、ウシガエル、シロアゴガエルの3種は、人により持ち込まれた外来種です。生態系への影響が懸念されています。
オオヒキガエルは、中南米原産です。最初に南大東島に移入され(移入経路、年代不明)、石垣島へ1978年に南大東から持ち込まれました。大型で、目の前を動く物は何でも食べるため、在来の小動物への影響が懸念されています。オオヒキガエルは特定外来生物に指定されています。
ウシガエルは北アメリカ原産です。1953年に食用の目的で久米島に移入されました。その後県内各地に分布を広げていきました。1970年代から1980年代にかけては、高密度で生息していたようですが、サトウキビへの転作による水田の減少で、ウシガエルの個体数も減少しつつあるようです。ウシガエルが生息する場所では、在来種のヌマガエルが激減しているとの指摘があります。ウシガエルは、特定外来生物二次指定候補です。
シロアゴガエルは、東南アジア原産です。1964年に嘉手納町で初めて確認されました。その後分布を広げていき、現在では沖縄本島全域で見られます。また最近宮古にも侵入してしまいました。沖縄本島中部を中心に分布を広げていったため、東南アジアから米軍の軍事物資にまぎれて入ってきたと考えられています。
なお3種のカエルは、環境省により特定外来生物に指定されています。

5.絶滅の危機
多様な沖縄のカエル達ですが、彼らの多くが絶滅の危機に瀕しています。17種の在来種のうち、10種(約6割)のカエルが「改訂 沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物」(沖縄県 2005年)や、「両生類のレッドリスト」(環境省 2006年)に掲載されています。
沖縄県に分布するカエルは、特定の島にしか分布していない固有種が多くなっています。また沖縄島(沖縄本島)に分布するカエルには、「山原」に分布域が限定されているカエルも数種います。彼らの生息域の面積は、必然的に非常に狭くなってしまいます。沖縄県の面積が、全国の0.6%ぐらいですから、山原の、しかも河川源流域にしか生息していないなんて、そのカエルの分布域はとても狭いことになります。もともと、存続基盤がとても弱いのです。したがってその生息域が開発されたり、外来種が侵入したりすると、カエル達がアッという間に絶滅してしまう危険性が高いのです。
種名 |
沖縄県レッドデータブック |
|
その他 |
| ミヤコヒキガエル |
− |
準絶滅危惧 |
− |
| ハロウェルアマガエル |
準絶滅危惧 |
− |
− |
| イシカワガエル |
絶滅危惧TB類 |
絶滅危惧TB類 |
沖縄県指定天然記念物 |
| オオハナサキガエル |
準絶滅危惧 |
準絶滅危惧 |
− |
| コガタハナサキガエル |
絶滅危惧TB類 |
絶滅危惧TB類 |
− |
| ハナサキガエル |
絶滅危惧TB類 |
絶滅危惧種U類 |
− |
| ホルストガエル |
絶滅危惧TB類 |
絶滅危惧TB類 |
沖縄県指定天然記念物 |
ヤエヤマハラブチガエル |
絶滅危惧種U類 |
− |
− |
| リュウキュウアカガエル |
準絶滅危惧 |
準絶滅危惧 |
− |
| ナミエガエル |
絶滅危惧TB類 |
絶滅危惧TB類 |
沖縄県指定天然記念物 |
固有:ある生物の分布が、特定の地域に限定されること。沖縄のカエルの多くが、「沖縄本島固有」であったり、「中部琉球固有」であったりします。例えばハナサキガエルは、沖縄本島の山原にのみ分布していますし(沖縄本島に固有)、イシカワガエルは沖縄本島と奄美大島にしか分布していません(中部琉球に固有)。
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